ワインと食、そして旅 -WINE, DINE & TRAVEL PILOT

ワインエバンジェリストによるワインと食と旅のブログ

フランス人って

 フランス人のサッカー選手が、日本のホテルで人種差別的な発言したと報道がされていますね。このサッカー選手は日本に来て調子に乗って、思わず本音が出たんだろうとは想像にかたくないです。

 今回は、フランス人の話を少ししたいと思います。

 私は以前、パリに住んでいたことがあり、フランス人の友人も多いんです。その私の、あくまで私個人の感想ですが、フランス人は案外小心者が多くて、程度の差こそあれ、喋る内容は大物気取りで中身はほとんど無いし、相手が劣勢と見るや今までヘイコラしていたのに手のひらを返したように強気に出ます。もちろん、良い方も大勢いらっしゃいますが、こういう点が目立ったりします。

 あと、男はもれなく女が好きすぎ。女性のアパルトマンの部屋の前で一晩「愛してる」と言い続けた男を何人も知っている。朝方すごすごと帰るんだが。

 見てくれは気にしますね。だからお洒落なんですよ。

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 過去、パリに2年住み出張や観光でも数十回フランスを訪れていますが、フランス人のシステムやルールの無さや場当たり的な対応にいつも腹がたちます。それをカバーできるだけの昔の日本人が持っていた勤勉さや個人の能力の高さも無いので、物事がシステマチックに運ばずグチャグチャになってしまう。まあ、私はフランス人のノー天気さには慣れっこで、ノー天気さが居心地が良かったりするんですが、いい加減さには、かなり腹が立つことがあります。

 以前、CDGでのエアフランスの搭乗手続き(ボーディング)が酷かったことがあります。搭乗ゲートに人が群れた。原因は、搭乗券の再発行や席指定をボーディングの時点でやっている客が何人もいたからだ。だから列が流れない。焦りまくって対応している係員の横には、ほかの係員が数人いて、彼ら彼女らは脳天気にバカッ話をしていました。とても腹立ちました。「テメーら、仕事しろって。」

 私には、フランスに住んでいた時からのフランス人の友人が多い。フランス文化は尊敬しているし、何より好きだ。しかし、物事を論理的にシステマチックに前に進めることは出来ないようだ。数学者のガロアを輩出した国とは思えない。システマチックに進めることや、論理的なことが全てに良いとは思わないけど、そうしなければならない事がグチャグチャになるとね、やってられません。反面、混沌とした良さがあることも事実です。

 パリやフランスの他の都市で、高級ホテルに泊まるぶんには、あまり不自由はないんですが、アパルトマンを借りて住むのは、些かゴメン被りたい。古いアパルトマンだと色々壊れるし、壊れるとなかなか修理に来ないから、暫く不便と付き合うハメになる。

 ここに書いたことは、甚だ私の個人的な意見であるということをお断りしておきます。論理的でシステマチックなフランス人も、もちろんいらっしやいます。人種差別反対の方々が主流なのも間違いありません。

 フランスやフランス人には、特に遺恨はありませんし(笑)。

サンブリのワイン

 ブルゴーニュ地方の一番北に、シャブリ&グラン・オーセロワ地区があります。ワイン生産地の区分ですね。シャブリは、辛口白ワインで有名。ブドウは、シャルドネになります。それでは、グラン・オーセロワ地区はどうでしょう。

 グラン・オーセロワ地区は、シャブリの南西に位置しています。自治体でいうと、シャブリと同じく、ヨンヌ県になります。3つの村名AOCがあります。

 

グラン・オーセロワ地区の村名AOC

 Irancy イランシー 赤(ピノノワール )

 Saint Bris サンブリ 白(ソービニヨンブラン)

 Vezelay ヴェズレイ 白(シャルドネ)

 シャブリも他のブルゴーニュ地方も、白ワインは、シャルドネですね。ブルゴーニュの南の地域のコート・シャロネーズのブーズロンではアリゴテがありますが、まあ、ほとんどがシャルドネになります。

 ブルゴーニュワインのブドウの品種は、赤がピノノワールとガメイ。白がシャルドネとアリゴテ。

 そんななか、唯一、サンブリの白が、ソービニヨンブランなんです。

 

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 AOCサンブリは、ソービニヨンブランの白のみが認められています。グラン・オーセロワ地区は、寒い地域ですので、酸味がありフレッシュな白ワインになります。

 上の写真は、AOCサンブリなんですが、青リンゴ系の良い香りがします。アロマティックです。味わいは、爽やかな酸味があるんですが、温度が上がってくると、少しキツめに。苦味は穏やか。余韻はあまり長くはありません。

 日本では、あまり見かけないんで、三千円以下で見かけたら、飲んでみて下さい。シャルドネはちょっとという方におススメします。

 

月の満ち欠けとワイン

 ビオディナミという単語があるんですが、これはフランス語で、英語でいうとバイオ・ダイナミックス。後ろに農法がくっついてバイオ・ダイナミックス農法となります。日本語は、生体力学農法。有機農法、自然農法の一種で、ワインの世界では、自然派のワイン造りの手法の一つで、月の満ち欠けに基づいた栽培方法です。

 

バイオ・ダイナミックス農法

 20世紀初頭に人智学、ヴァルドルフ教育法を提唱した、ドイツの哲学博士ルドルフ・シュタイナー氏による「農業講座」が基礎となっています。
 バイオ・ダイナミックス農法の根底には、「全ての生命は、地球上で完結しているのではなく、地球を含む宇宙の営みからも影響を受け、調和しながら生きている」という考えがあります。

 農法ですから、ワインに限ったわけではなく、食品や飲料、化粧品などの農産品を使用した製品でも利用されています。

 

認定機関

 認定機関もちゃんとありまして、代表的な認定機関として1987年にフランス政府が認められた「DEMETER デメテ―ル」があります。非常に厳しい認定基準で、最低でも7年、規定にのっとったビオディナミを行うと、7年目以降に認定されるものです。

 

種蒔きカレンダー

 ビオディナミ、バイオ・ダイナミックス農法は、ブドウ栽培で具体的に何をするのか。

 バイオ・ダイナミックス農法には、種蒔きカレンダーと呼ばれる農事暦があって、重要なポイントについて、いつなにをするかが決まっています。この種蒔きカレンダーは、地球や宇宙の大きなパワーを取り入れ土地や植物の活力を最大限に引き出すため、月、惑星、星座の位置から割り出したものです。

 このカレンダーには、月の満ち欠けに基づいたブドウの種蒔きや収穫、瓶詰の時期、さらにはワイン熟成用に使う樽のオーク材の伐採日などまでもが細かく記されているそうです。

 ちなみに、農薬は、天然のものを除いて、使いません。

 

ビオディナミのワイン

 

 こう書いてくると、なんだかオカルティックな感じもしてくるんですが、樹勢が良くなるなど、実際に良いことが多いらしく、近年、バイオ・ダイナミックス農法を取り入れるワイナリーも増えてきているようです。

 

 実際のワイン、ワイナリーでは、

超有名どころで、『ロマネコンティ』

フランスローヌのいくつかのワイナリー

日本では、サントリー登美の丘ワイナリー

などがあります。あくまで代表例です。

 

 なお、自然派ワインには、ビオディナミ以外にも、リョット・レゾネやビオロジックがありますが、この違いはまたの機会に。

生ライチが食べたい!

 「また生ライチを食べたい!」 

 初めて生のライチを食べたのが数年前、タイのバンコクでした。

 「生のライチはぜったいに美味しいから。」と、現地の人たちに薦められ食べたんですが、それまで冷凍のライチしか食べたことがなかった私は、ビックリしました。ホントに美味しかったんです。正直、冷凍ライチは食べる気はなくなりました。

 生ライチは、香りが高く、上品な味わいの南国のフルーツです。北半球の熱帯地域では、ライチは4月から今が旬なんです。

 一昨年は、夏のオーストラリアで食べることができたんですが、今年はまあ無理だろうなと思っていたところ、台湾フェスのオンラインショップで見つけました。ゴールデンウィークに台湾フェスが開催されていたようなんですが、緊急事態宣言下で行けませんでしたが、オンラインショップがあったので、そこで購入しました。

 今日、台湾の高雄から生ライチが届きました。3キロ。けっこう楽しめそうです。

 

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 冷蔵便で届いたので、さっそく頂きました。

「美味い!」

種が小さく可食部が大きい、たいへん良質なライチです。QRコードを読むと、台湾南部の高雄で栽培された陳さんのライチでした。

 最近、スーパーに行くと、台湾からパイナップルが豊富に入ってきており、美味しいパイナップルが適切な価格で手に入るようになりました。生のライチも、台湾から今後毎年入ってくると良いな、と思います。

あまり飲まない?ボルドーの白ワイン

 ワインの世界でフランスのボルドーというと、赤ワインですよね。そう言えば、メドックマラソンというのがボルドーであるんですけど、ワイン飲みながら、つまみを食べながらフルマラソンを走るという、なんとも羨ましい限りのマラソン大会なんです。一度出てみたいと思っていますが、多分、飲み過ぎで途中でリタイアするんでしょうね。

 ボルドー=赤ワインなんですが、確かにAOCのメドック地区、サンテミリオンもポムロールも赤だけが認められています。いったい白はどこに行ったんですかね。

 ここでは、AOCの知識を前提に話をしていますが、すご〜く簡単に言うと、AOCはフランスのワインの格付けで、この格付けを名乗る為には、産地、葡萄の品種、収穫年度に加えて、使用できるワインの品種、葡萄の栽培方法、醸造方法などの規制を遵守しなければなりません。

 

AOCについてはこちら

https://nwawinescom.hatenablog.com/entry/2020/05/02/163146

https://nwawinescom.hatenablog.com/entry/2020/04/19/233217 

 

 メドック地区の、例えばマルゴー村のAOCマルゴーと名乗ることができるのは、マルゴー村で造られた赤ワインのみで、白ワインは名乗れません。

 

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 そんなボルドーですが、白ワインが認められている地域があるんです。それはグラーブ。

 グラーブのAOCは3つです。

 AOC Graves グラーブ 赤白

 AOC Graves Suprieures グラーブシュープリエール 半甘白

 AOC Pesac-Leognan ペサック・レオニャン 赤白

 グラーブは、赤白両方が認められています。グラーブの代表選手というとですね、AOCペサック・レオニャンの中のペサック村、ここに格付け一級のシャトー、シャトーオーブリオンがあります。素晴らしい赤ワイン。価格もすごいですが、、。シャトーオーブリオンは赤ワインのみです。

 グラーブの白ワインはどうかというと。

 まず赤白ワイン両方が認められているのが、AOCペサック・レオニャンの格付けシャトーでは、レオニャン村のシャトーカルボニューなど6シャトー。

 白ワインのみは、シャトークーアンなど3シャトーが白ワインのみです。

 

赤白が両方が認められている

 シャトー・カルボニュー(Château Carbonnieux)

 シャトー・ド・シュヴァリエ(Château de Chevalier) 

 シャトー・マラルティック・ラグラヴィエール(Château Malartic Lagraviere)

 シャトー・ブスコー(Château Bouscaut

 シャトー・ラトゥール・マルティヤック(Château Latour Martillac)

 シャトー・オリヴィエ(Château Olivier)

 

白ワインのみが認められている

 シャトー・クーアン(Château Couhins)

 シャトー・クーアン・リュルトン(Château Couhins Lurton)

 シャトー・ラヴィユ・オー・ブリオン(Château Laville Haut Brion)

 

 ここでは、格付けされたシャトーのみの話をしています。グラーブの格付けは、シャトーオーブリオンのみがメドック地区の格付けの時に、一緒に格付けされました。メドック地区の格付けだったんですが、さすがにシャトーオーブリオンの名声は無視できなかったようです。なので他のシャトーは無視られました。

 そこでグラーブも格付けをしました。一階級のみの格付けですので、格付けされているかいないかになります。

 グラーブには、格付けされていないものの素晴らしいワインの造り手はいて、白ワインも造っています。

 

グラーブの認められている白ワインのブドウ品種

 AOCですから、ブドウ品種は認められているものだけになります。それは3品種。

 

 ソービニヨンブラン

 セミヨン

 ミュスカデル

 

 案外木樽熟成が多い感じがするんですが、個人的には、ブルゴーニュのシャルドネより、ソービニヨンブラン主体のグラーブの白の方が好きですね。マロっとしていて美味しい。あまりグラーブの白ワインは見かけないんですが、機会がありましたら、一度飲んでみて下さい。

 

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出席 https://store.shopping.yahoo.co.jp/netwine/fr-lfbl.html?sc_i=shp_sp_search_itemlist_shsrg_img

 

一応、ここでは、ソーテルヌなどの甘い白ワインは外しての話ですので、ご了承をお願いします。

 

フォートワースのロデオ

 ダラス・フォートワース空港の空港ビルを一歩外に出て空を見上げると、夏の太陽が大層眩しくて、空がすごく青かったのを覚えています。もう5年近く前のことです。

 仕事でシアトルに滞在していたところ、フォートワースの友人(アメリカ人)が、『週末に遊びに来ないか』と言うので、特にすることもないので、ロスアンジェルスて飛行機を乗り継いで、6月後半の金曜日、ダラス・フォートワース空港に降り立ちました。

 テキサスは10数年前にオースチンに数日滞在したんことがあったんですが、ダラスやフォートワースは初めての訪問。

 友人が空港まで迎えに来てくれたので、レンタカーは無しで、友人の車で彼の家に。

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フォートワースの青い空

 

ロデオ Rodeo

 フォートワースはカウボーイの街です。ジーンズはLevisではなくLeeで、ふつうにカウボーイブーツにテンガロンハットの人達が歩いています。

 カウボーイと切っても切れないのが、ロデオ。ロデオは、暴れ牛や馬に何秒、何分跨っていられるかを競うものです。もともとは、カウボーイがおのれの馬術を試したり誇示したりしたところから始まったようですが、今ではキチンとしたルールがあるスポーツだそうです。フォートワースのダウンタウンには、ロデオ専用の会場があります。

 

ロデオ会場のエントランス

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この中で、チケットを買います。

 

ロデオ会場

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ピントが合っていませんが、ブルライディング(Bull Riding)という暴れる牡牛に跨っている時間を競うものです。
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夕食はメキシカン

テキサスは、日本でも、その昔流行ったTEX MEXの本場です。テックスメックスと発音しますが、テキサス風のメキシコ料理のことです。ストロベリーフローズンマルガリータとガッカモーレにチリ。

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チリバーガー
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 テキサス州は、私が見るところ、西海岸とも東海岸とも異なる文化があります。カウボーイだったり、ピックアップトラックだったり、ロデオだったり、ドデカいステーキだったり。

 カリフォルニア州ではエコカー全盛時代ですが、テキサス州はまだピックアップトラック。普段からテンガロンハットかぶって、カウボーイブーツをはいている。

 ある意味、時が止まったようなエリアですが、ダラスとヒューストン間に日本の新幹線が走ります。2025年の開業を目指しているようです。トヨタ自動車の米国本社がカリフォルニアからテキサス州のプレイノに移転しました。テキサス大学オースチン校は、コンピュータサイエンスでは優秀な学校です。

 というように、テキサス州は色々あって、興味深いところだと思います。アメリカ旅行では、優先度はあまり高くはないと思いますが、機会がありましたら訪れてみてください。

Enfance finie と酒飲み

 大酒飲みというのはいるもんで、酔い潰れそうになっても、『酔ってませんよ。全然酔ってない。』などとのたまいながら、いつまでも飲んでいる。また、平然として長々と飲んでいる人もいます。たくさん酒を飲みたいのは同じなんですよ。ワインをガブ飲みする人はさすがにあまり存じ上げませんね。

 大酒飲みの人の場合、いつ頃から、大酒飲み化してくるんでしょうか。まさか高校生の時分には大酒飲みだったという人は少ないと思います。

 日本の場合、法律で飲酒は二十歳からです。酒を飲む行為というのは、なんか大人への階段を一段上がったような気にさせます。幼年期と青年期の境目にあるような感じがします。

 

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 幼年期と青年期の境目、思い出すのは、Enfance Finieというの詩です。

 

Enfance Finie

 海の遠くに島が……、雨に椿の花が堕ちた。鳥籠に春が、春が鳥のゐない鳥籠に。

約束はみんな壊れたね。

海には雲が、ね、雲には地球が、映つてゐるね。

空には階段があるね。

 今日記憶の旗が落ちて、大きな川のやうに、私は人と訣わかれよう。床ゆかに私の足跡が、足跡に微かな塵が……、ああ哀れな私よ。

僕は、さあ僕よ、僕は遠い旅に出ようね。

 

 アンファンスフィニ。幼年期の終わりと言う意味なんですが、何らかの形で自分の子供的な状況と訣別したい考えがあるらしく、象徴的な行動を取ることで、自らを納得させる場合もあります。パパママからお父さん、お母さんと呼び方を変えたりします。『もう子供じゃないんだからね。』的な話です。

 大人になったような気になる行動の一つに酒を飲むがあります。酒を飲み始めた頃のことを覚えていますか? 私は、二十歳の誕生祝いに家族が買ってきた赤ワインを飲み過ぎて、気持ちが悪くなったことを思い出しました。なんか酒を飲むという行為は、「俺はもう大人なんだぞ。」と、それこそ幼年期との別れを表しているように思ったものです。

 少し酒が飲めるようになると、ウンチクを語ったりするようになる。「俺って、けっこう酒を知ってるんだぜ。」的なモードで話すようになるわけですが、たいがいどこかで恥を描く羽目になりますね。何でもそうなんですが、人間、この『少しできるようになった状態』というのが、まずいっちゃあマズイわけで、理由や裏付けもなく、単に自分ができる気になってしまいます。

 何でだろう? やっぱり良い格好したいのかな。少しなのに、オールマイティ感を感じてしまい、結局、力不足で失敗したり、理由もなく上から目線で喋ってしまうので、嫌われたりもします。『あいつと飲むと面倒くさいから。』なんて言われたりもします。

 ワインについて、その傾向は大変に顕著で、小うるさいのを何人か知っています。あまり良くない性癖です。人間、物事に精通すると、知識の出し惜しみもしなくなりますし、ましてやひけらかしたりはしないものです、と自戒を込めて。

井伊大老と都々逸

 今回は、日本の古くからの言葉のテンポの話をします。これはほぼ3種類になります。 

 

57577の短歌形式

575の俳句

この2つは馴染みがあると思います。もう1つ、

7775の都々逸

都々逸は江戸時代に流行った俚謡です。

 

 短歌は好きで自分でもたまに作りますが、今回は都々逸の話です。短歌や俳句とは異なり、うたわれた内容がかなり俗っぽかったせいか、ほぼ廃れました。色々と面白い都々逸が残っていまして、桜田門外ノ変で暗殺された井伊直弼さんが創ったものも残っています。

 

「逢うて別れて 別れて逢うて(泣くも笑うもあとやさき) 末は野の風 秋の風 一期一会の 別れかな」

(井伊直弼 茶湯一会集)

 

 井伊直弼さんというと、近江彦根藩主かつ江戸幕府の大老で、安政の大獄を指揮し、桜田門外で暗殺されてしまった方です(桜田門外ノ変)。大名で幕府の大老ですから、かなりおかたいイメージがあるんですが、こんな都々逸を創っています。以外じゃないですか。

 井伊直弼さんは、雅号を『埋木舎(うもれぎのや)』と名乗っていました。これは、花の咲くことの無い埋もれ木の例えでした。直弼さんは、なんと先代藩主の14男だったんです。ふつうは、藩主になるのは無理ですよねぇ。ご本人も無理だと思っていたんでしょうね。だから『埋木舎』。

 文化度は素晴らしく高い方で、茶道や和歌、鼓なんかも良くしたらしいです。国学に秀で、剣の腕もたったようです。

 若い頃は、女性に入れ上げているし。なかなか面白い人物だと私は思います。個人的に好きな方です。

 「藩主は無理だよなぁ」と思っていた井伊直弼さんは、なんと思いもかけず藩主になってしまいました。

 藩主としても、藩政改革にも意欲的で、領内巡検も頻繁に行なっています。人材登用にも熱心だったようです。

 都々逸に戻ると、『一期一会の 別れかな』は、優れた茶人だった井伊直弼さんですので、茶道の一期一会と読む向きもあるんですが、私個人的には、惚れた女性との一期一会ともよめると思っています。まあ、どちらでもとれますね。

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『井伊直弼像』狩野永岳筆 彦根城博物館蔵

 

 井伊直弼さん、中々魅力的な方だと思いますし、彼の創った都々逸が僕は好きで、たまに口ずさみます。桜田門外ノ変、実に惜しい方を亡くしたと思っています。

ネッビオーロとゴルゴンゾーラ

 今回は、イタリアはピエモンテ州の話です。

 ミラノの友人(イタリア人)に言わせると、北イタリアだけだったら先進工業国で、怠惰な南イタリアとは、『私達違うから。』だそうですよ。彼の言う北と南の分岐点はどこかと言うと、フィレンツェあたり、つまりトスカーナ州なんだそうです。同じようなことを数人のミラノとヴェネツィアの友人も言っていました。まあ、確かに、ローマあたりは、お気楽でいい加減な人が多いイメージがあります。

 スイスとオーストリアと国境を接するトレンティーノ・アルト・アディジェ州という北の方の州があるんですが、この州の人々の性格は、ドイツ人に近いと聞いています。イタリア人というと、お気楽で陽気と思いがちですが、それはどうもやはり南イタリアの方らしい。

 イタリアの国土の形はよくブーツに例えられますよね。イタリアの面積は、日本の約80%。日本ほどではないですが、南北に長い国です。北緯35度から47度の間にあり、北のスイス国境のトレンティーノ・アルト・アディジェ州から南のシチリア島。気候は全く異なります。ちなみに日本の緯度は、北緯20度から46度です。 

 当たり前ですが、イタリア20州は、テロワールが異なりますし、同じ州でも、高度や土壌の違いでテロワールが違います。

 北のトレンティーノ・アルト・アルジェ州は、山岳地帯なので、気候は高度があがるにつれて、地中海性気候、大陸性気候、アルプス性気候になります。

 南のシチリア島は、地中海性気候ですが、アフリカに近いので、かなり暑くなります。シロッコという乾燥した風がサハラ砂漠から吹いてきます。なので優良なブドウ畑は、高度が多少高く冷涼になるエトナ山の中腹に広がっています。

 イタリアは州が20あるんですが、その20州すべてでワインが造られています。その中でも特に有名なのがピエモンテ州とトスカーナ州でしょう。

 ピエモンテ州は、北イタリアにあります。州都はトリノ。冬季オリンピックの開催地ですので冬は寒い地域です。

 ピエモンテ州のワインは、バローロやバルバレスコが有名ですね。バローロやバルバレスコは、ネッビオーロというブドウを使います。他にもバルベラ種やドルチェット種の赤ワインがあり、非常に美味しいです。白ワインは、コルテーゼ種のガヴィや甘いモスカートビアンコ種などがあります。

 フランスのAOCにあたるDOCG(統制保証原産地呼称)も17、イタリア全土で74なので、ピエモンテ州は多いんです。

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 ピエモンテ州は、ワインだけでなくチーズも有名です。三大青かびチーズの一つのゴルゴンゾーラは名産です。ブラというチーズも美味しいし。料理は、バーニャカウダが有名です。

 ピエモンテ州の世界遺産は、ランゲ・ロエロ・モンフェラート(Langhe-Roero e Monferrato)。世界文化遺産です。ブドウ畑の景観と何世紀にも渡る葡萄栽培とワインづくりに関する、技術的、経済的プロセス全般が包括されて、世界文化遺産に指定されています。

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出典 https://visitaly.jp/unesco/langhe-roero-e-monferrato/

 

 取り止めもない話をしてきましたが、ピエモンテ州はトリノ以外は、田舎というか農産地域です。時間がゆっくり流れていきます。ゆったりとチーズをつまみながらワインを飲む。旅行で行くならば、大都会のミラノと合わせて行くとバランスが丁度良いかもしれません。

本直しと柳蔭

 たまに時代小説なんかを読むと、江戸の居酒屋で「直し」を注文するシーンが出てきます。

 「直し」ってなんだろう? 酒には間違いなさそうですが、飲んだことないし。

 「直し」とは、「本直し」のことで、京大阪では、「柳蔭」と呼ばれていました。「本直し」とは、焼酎を味醂で割った飲み物で、冷やして飲んでいたようです。冷やすといっても当時は冷蔵庫は無いので、井戸で冷やしていました。夏の酒ですね。暑気払い。

 江戸時代後期に著された本に『守貞謾稿』があります。喜多川守貞さんという人が三都(江戸、京都、大阪)の風俗や事物を説明している本なんですが、なんと全35巻。約30年にわたり書き続けたそうです。風俗や事物を可能な限り、「江戸ではこうだ」、「京大阪ではこうだ」と比較対象をして書かれています。この『守貞謾稿』に本直しと柳蔭が載っています。

 調べてみると、本直しと柳蔭は、多少製法が違うようです。ハッキリとはわからないのですが、京大阪の柳蔭は、今で言うところのリキュールとして作られており、本直しは、味醂の焼酎割りを、店で作っていたようです。

 ここで言う味醂は、伝統製法で造られた本みりんのことです。本みりんの原材料は3つ。餅米、米麹、米焼酎。本みりんは、今では、調味料ですが、もともとは甘い酒でした。室町時代後期、いわゆる戦国時代ですね。中国から入ったという説や日本古来の白酒に焼酎を入れた説など諸説あります。

 江戸時代になると、高級な甘い酒として、女性にも親しまれるようになりました。そして、本直しや柳蔭です。お屠蘇にも本みりんは使われますね。

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出典 かごや https://www.kagoya-group.co.jp/products/detail/25

 

 それでは、本直しをちょっと作って飲んでみたいと思います。

 本みりんと米焼酎の割合は、1:3ぐらいが良さそうです。アルコール強めが好きな方は、1:2に近くても良いかな。

 へぇ、スッキリとしていてくどくない甘さ。美味しいです。これいいかも。氷を入れても美味しい。ポイントは、伝統製法の本みりんと質の良い米焼酎を使うことです。

室町時代の酒

 今回は、清酒の話です。

 奈良の今西酒造の三諸杉という純米酒が好きなんですが、中でも「菩提酛三諸杉」を気に入っています。菩提酛三諸杉とは、室町時代の醸造法の「菩提酛造り」で醸した酒です。

 

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「菩提酛造り」は、清酒発祥の地として有名な奈良県にある寺「菩提山正暦寺(ショウリャクジ)」で室町時代に確立された酒造法で、今の酒造りの原点だとされています。 

 この菩提酛造りは、大正時代に一度消滅してしまいました。明治時代に開発された速醸酛が普及したからなんです。速醸酛は菩提酛に比べて、手間が掛からないそうです。なので、手間隙の掛かる菩提酛造りは消滅。

 この菩提酛造りを何とか復活させようと、1996年に奈良県内の酒造会社有志・奈良県工業技術センター(現・奈良県産業振興総合センター)・正暦寺が、「奈良県菩提酛による清酒製造研究会」を立ち上げ、菩提酛造りが復活しました。

 現在では、正暦寺で毎年1月に酒母の仕込みを行なっていて、「奈良県菩提酛による清酒製造研究会」に所属する奈良県の8つの蔵元がその酒母を持ち帰り、その酒母を用いて清酒を醸造しています。冒頭の今西酒造も8つの酒造の一つで、「菩提酛三諸杉」を醸造しています。

 

 奈良が日本清酒発祥の地と言われる理由なんですが、正暦寺では、

 菩提酛造り

 仕込みを3回に分けて行う「三段仕込み」

 麹と掛米の両方に白米を使用する「諸白もろはく造り」

 腐敗を防ぐための火入れ作業

 

などの近代醸造法の基礎となる酒造技術が確立されていました。それで奈良や正暦寺が日本清酒発祥の地と言われているわけです。なお岡山県にも昔からの製法で造っている蔵元があるそうです。

 

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日本清酒発祥之地の碑

出典 正暦寺ホームページ http://shoryakuji.jp/sake-birthplace.html

プリミティーヴォとジンファンデル

 今夜飲んだワインは、ワシントン州のチャールズスミスワイナリーのCASA SMITHシリーズ、プリミティーヴォ(Primitivo)でした。

 プリミティーボ、あまり馴染みは無いですか。このプリミティーヴォ、カリフォルニア州ではジンファンデルと呼ばれています。カリフォルニアワインがお好きな方には、「あぁ、あれか。」という程度にはジンファンデルは有名です。

 ワシントン州でも多分ジンファンデルの方が通りが良いと思うんですが、チャールズスミスは、イタリアンインスパイヤード(Italian Inspired)と裏面に書いてありますので、わざとプリミティーヴォと表記しているんでしょう。

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 確かに、プリミティーヴォという赤ワイン用のブドウ品種のワイン造りは、イタリアのプーリア州が有名です。

 イタリアは、よくブーツの形に例えられるんですが、プーリアは、ブーツの踵の部分にあたる南部の州です。州都はバーリ(Bari)。

 

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出典 イタリア政府観光局 https://visitaly.jp/region/puglia/

 

 世界遺産も、白い漆喰塗りの壁に円錐形のとんがり屋根の家々、トゥルッリがあるアルベロベッロがあります。

 

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出典 イタリア政府観光局 https://visitaly.jp/unesco/trulli-di-alberobello/

 

 プーリア州は地中海性気候。夏は暑くて、冬は温暖な気候です。オリーブ、オリーブオイルが有名で、量においてもイタリア国内生産一位を誇っています。豊かで乾燥した土地はワイン生産に適しています。プーリア州ワイン街道と言われて、ワイナリーが多くあります。

 

プーリア州のブドウの品種

 

プリミティーヴォ

 やはり南のワインなので濃い赤ワインになります。果実味が豊か。スムースな飲み口。渋味や酸味は穏やかなので、ワイン初心者にも比較的飲みやすいと思います。

 原産地はクロアチア。2000年以上前にアドリア海を渡りイタリアに。19世紀にイタリアからハンガリーを経てアメリカに。プリミティーヴォとジンファンデルはDNA鑑定により同種ということが判明しています。

 

ネーロ・デ・トロイア

 プーリア州の土着品種の黒ブドウ。タンニンが穏やかで果実味豊か。個人的な見解ですが、品質がまちまちなので選ぶのが難しい。

 

ヴェルデーカ

 やはりプーリア州の土着品種。白ワイン用のブドウです。柑橘系の香りの爽やかなワイン。

 

 今回は、アメリカワシントン州のワインからイタリアプーリア州のワインの話になりました。イタリアは、20州すべてでワインが生産されています。フランスの原産地呼称AOCにあたるDOCGやDOCも多い。北部のヴァッレダオスタ州と南部のプーリア州、シチリア 島では、大きく気候が異なります。テロワールも異なりますので、さまざまなワインを飲める楽しみがイタリアワインにはありますね。

江南の春と吉野の初夏

 5月も半ばにかかり、東京は初夏に近くなってきました。梅雨入りまで、光あふれ風薫る季節が続きます。気持ちの良い太陽の光の中、風に纏わりつかれて、うたた寝しつつ過ごす午後は幸せを感じます。お供に冷やしたロゼワインがあるとなお良いなぁ。

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 この季節になると、毎年決まって思い出すのが、「江南春」という漢詩。中国は唐代(晩唐)の詩人、杜牧の作品です。学生時代から、この詩の風景に憧れていました。

 

千里鶯啼緑映紅

水村山郭酒旗風

南朝四百八十寺

多少楼台煙雨中

 

意訳をすると、

 

そこらじゅうで鶯が鳴いていて、赤い花が緑の木々に映えていますよ

水辺の村や山里の村が見えますし、酒場ののぼりが風にはためいています

南朝時代の名残の寺院が多くあって、それらの寺院の楼閣が春の霧雨にけぶっていますね

 

江南の春の、なんとものんびりとした風景を詩人が見るとはなしに見ているわけです。また、南朝時代の名残りをとどめる寺院を見て、越し方行末も考えます。

 

 中国の江南は、長江の下流南岸の地域です。長江の最下流部は揚子江と呼ばれています。私の世代は揚子江と習ったので、こちらの方が馴染みがありますが、およそ6300kmにわたる川全体を言う時は、長江。その長江の南岸の、今の江蘇省、安徽省、浙江省あたりが江南地域で、古くから一大農耕地域だったようです。南の地域なので、春とはいえ、おそらく東京の初夏ぐらいの気温はあったんだろうと推測します。

 

 作者の杜牧は、良いところの坊ちゃんで、科挙の進士に合格したエリート役人です。育ちの良さが、詩に癒しを与えているように思います。

 

 自身の心を解放でき、癒される場所で、春から初夏を過ごして、ボッーとする贅沢な時間を持つことは、精神衛生上大切だと私は思います。

 私の癒しの場所は奈良。吉野川沿いの初夏の佇まいや、三輪の山の辺の道、明日香村あたりですね。お供の酒は、ロゼワインとともに、今西酒造の三諸杉があればより至福です。

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アルゼンチンワイン

 アルゼンチンと言えば、まあ最初に思い浮かぶのは、タンゴですよね。アルゼンチンタンゴ。数日前にもNHKのクラシックTVという番組で、アストル・ピアソラの特集をしていました。バンドネオンの音がロマンを誘って良かったですよ。

 さて、アルゼンチンのワインの話です。アルゼンチンは、南米でチリと並ぶワインの大生産地。手頃な価格で、わかりやすい美味しさのワインを造っている国なんです。なかでもメンドーサ州が有名です。メンドーサ州は、南大西洋サイドに位置するアルゼンチンの首都ブエノスアイレスの反対、アンデス山脈の麓にあり、アンデスを越えると、そこはチリの首都サンチャゴという所に位置しています。アルゼンチンワインの総生産の約70%を占めています。

 

地域特性(テロワール)

 メンドーサ州やサンファン州、カタマルカ州などの主なワイン生産地域は、アンデス山脈の麓にあります。このアンデスの東側の麓にあるということは、ワイン用のブドウ栽培において、少なくとも3点のメリットがあります。

 ☞アンデス山脈が太平洋からの風を防ぐので、乾燥した地域になる

 ☞アンデス山脈の標高を利用してブドウ畑を冷涼な地域につくれる

 ☞アンデスの雪解水を利用できる

 

これがメンドーサのテロワールの一つです。

 

ブドウ品種

 赤ワイン用のマルベック、白ワイン用のトロンテスが2大品種になります。

 マルベックは私のブログでも書いていますが、フランス南西部が原産。アルゼンチンの風土にあったせいか、今ではマルベックと言えば、チリやアルゼンチンをまず思い浮かべますね。

カオールの黒のブログはこちらです

https://nwawinescom.hatenablog.com/entry/2020/09/03/065011

 トロンテスはスペイン原産になります。フレッシュな白ワインです。

 

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 写真は、チリのモンテス社がメンドーサで造るマルベック、KAIKEN MALBECです。わかりやすい美味しさで我が家のデイリーワインの一翼を担っています。

 アルゼンチンワインは、果実味が豊かで、実にコスパが良い、まさしくデイリーワインにぴったりのワインです。