ワインと食、そして旅 -WINE, DINE & TRAVEL PILOT

ワインエバンジェリストによるワインと食と旅のブログ

珍しい産地のワイン カオールの黒

 伊豆の踊り子の主人公が、伊豆下田から東京に帰る船に乗る直前に手渡されたのが『カオール』という商品名の口中清涼剤。たしか、踊り子の名前が『かおる』だったからですよね。別れのシーンでした。小説の終わりの方ですね。そういうこともあってか、カオールという単語の響きは悪くない、いやむしろ良い響きに感じます。

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 フランス南西部に、カオールという地域があります。Cahorsと綴ります。写真は、そのカオールのマルベックMalbecです。マルベックは、カオールではオーセロワAuxerrois、フランス南西部ではコットCotと呼ばれます。こういう地域によって名前が変わることを、『シノニム』と言うんですが、マルベック以外にもけっこうたくさんあるので、やっかいです。ワインソムリエ・エキスパート試験の一次試験に出題がされている分野なので、マストで覚えるわけです。例えば、スペインのテンプラニーニョは、スペイン国内のシノニムが多数あります。

 マルベックと聞くと、まず頭に浮かぶのは、チリやアルゼンチンのものですね。モンテスが有名。チリのコルチャグアバレーやアルゼンチンのメンドーサが主な産地ですが、果実味が豊かで濃密な味わいが特徴です。渋味は穏やか。色も黒葡萄を実感できる濃い色。比べて、カオールのオーセロワ、マルベックはどうかというと、濃密な味わいは同じなんですが、もう少しサラッとした感じがします。それでも『カオールの黒』と言われるように、色は黒く濃密な果実味豊富な味わいです。AOCカオールは、オーセロワを70%以上、メルローかタナを30%と規定されています。

 フランス南西部は、割と広い地域で、北はボルドーに近く、南はスペイン国境のピレネー山脈に近い。カオールは比較的北に位置し、ロット川が流れています。トゥールーズ・アヴェイロネ地区です。世界遺産『フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路』があります。

 フランス南西部は、まだ訪れたことがないのですが、ぜひ一度行きたい場所です。ピレネーを超えてスペイン側にも行ってみたい。