ワインと食、そして旅 -WINE, DINE & TRAVEL PILOT

ワインエバンジェリストによるワインと食と旅のブログ

本直しと柳蔭

 たまに時代小説なんかを読むと、江戸の居酒屋で「直し」を注文するシーンが出てきます。

 「直し」ってなんだろう? 酒には間違いなさそうですが、飲んだことないし。

 「直し」とは、「本直し」のことで、京大阪では、「柳蔭」と呼ばれていました。「本直し」とは、焼酎を味醂で割った飲み物で、冷やして飲んでいたようです。冷やすといっても当時は冷蔵庫は無いので、井戸で冷やしていました。夏の酒ですね。暑気払い。

 江戸時代後期に著された本に『守貞謾稿』があります。喜多川守貞さんという人が三都(江戸、京都、大阪)の風俗や事物を説明している本なんですが、なんと全35巻。約30年にわたり書き続けたそうです。風俗や事物を可能な限り、「江戸ではこうだ」、「京大阪ではこうだ」と比較対象をして書かれています。この『守貞謾稿』に本直しと柳蔭が載っています。

 調べてみると、本直しと柳蔭は、多少製法が違うようです。ハッキリとはわからないのですが、京大阪の柳蔭は、今で言うところのリキュールとして作られており、本直しは、味醂の焼酎割りを、店で作っていたようです。

 ここで言う味醂は、伝統製法で造られた本みりんのことです。本みりんの原材料は3つ。餅米、米麹、米焼酎。本みりんは、今では、調味料ですが、もともとは甘い酒でした。室町時代後期、いわゆる戦国時代ですね。中国から入ったという説や日本古来の白酒に焼酎を入れた説など諸説あります。

 江戸時代になると、高級な甘い酒として、女性にも親しまれるようになりました。そして、本直しや柳蔭です。お屠蘇にも本みりんは使われますね。

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出典 かごや https://www.kagoya-group.co.jp/products/detail/25

 

 それでは、本直しをちょっと作って飲んでみたいと思います。

 本みりんと米焼酎の割合は、1:3ぐらいが良さそうです。アルコール強めが好きな方は、1:2に近くても良いかな。

 へぇ、スッキリとしていてくどくない甘さ。美味しいです。これいいかも。氷を入れても美味しい。ポイントは、伝統製法の本みりんと質の良い米焼酎を使うことです。