室町時代の酒
今回は、清酒の話です。
奈良の今西酒造の三諸杉という純米酒が好きなんですが、中でも「菩提酛三諸杉」を気に入っています。菩提酛三諸杉とは、室町時代の醸造法の「菩提酛造り」で醸した酒です。
「菩提酛造り」は、清酒発祥の地として有名な奈良県にある寺「菩提山正暦寺(ショウリャクジ)」で室町時代に確立された酒造法で、今の酒造りの原点だとされています。
この菩提酛造りは、大正時代に一度消滅してしまいました。明治時代に開発された速醸酛が普及したからなんです。速醸酛は菩提酛に比べて、手間が掛からないそうです。なので、手間隙の掛かる菩提酛造りは消滅。
この菩提酛造りを何とか復活させようと、1996年に奈良県内の酒造会社有志・奈良県工業技術センター(現・奈良県産業振興総合センター)・正暦寺が、「奈良県菩提酛による清酒製造研究会」を立ち上げ、菩提酛造りが復活しました。
現在では、正暦寺で毎年1月に酒母の仕込みを行なっていて、「奈良県菩提酛による清酒製造研究会」に所属する奈良県の8つの蔵元がその酒母を持ち帰り、その酒母を用いて清酒を醸造しています。冒頭の今西酒造も8つの酒造の一つで、「菩提酛三諸杉」を醸造しています。
奈良が日本清酒発祥の地と言われる理由なんですが、正暦寺では、
菩提酛造り
仕込みを3回に分けて行う「三段仕込み」
麹と掛米の両方に白米を使用する「諸白もろはく造り」
腐敗を防ぐための火入れ作業
などの近代醸造法の基礎となる酒造技術が確立されていました。それで奈良や正暦寺が日本清酒発祥の地と言われているわけです。なお岡山県にも昔からの製法で造っている蔵元があるそうです。
日本清酒発祥之地の碑
出典 正暦寺ホームページ http://shoryakuji.jp/sake-birthplace.html