ワインと食、そして旅 -WINE, DINE & TRAVEL PILOT

ワインエバンジェリストによるワインと食と旅のブログ

パリスの審判、黄金のリンゴ一個からトロイア戦争

  最近、『パリスの審判』についての質問を頂いたので、私は一回ブログで書いてはいるんですが、加筆する形で再掲したいと思います。

 パリスの審判と聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょう? 

 ギリシャ神話という方もいらっしゃれば、カリフォルニアワインにフランスワインが敗北したワインテイスティングを思い浮かべる方もいらっしゃると思います。

   何事にもオリジナルを大切にする私は、まずギリシャ神話のパリスの審判を説明したいと思います。

 ちなみにギリシャ神話のパリスの審判は、格好の絵画のモチーフらしく多くの有名画家がパリスの審判という題名の絵画を残しています。中でもルーベンスのものが超有名ですね。

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    ギリシャ神話のパリスの審判は、簡単に言うと三人の女神のうち誰が一番綺麗かを羊飼いをしていたパリス君に決めさせようという話です。三人の女神とは、ヘーラー、アテーナー、アフロディーテー。事の始まりは、不和の女神のエリスが、やっぱり不和は結婚パーティーには不向きだよね、ということで、神々の結婚パーティーに一人だけ呼ばれなかったことにあるんですね。不和の女神エリスは除け者にされたことに激怒して、「最も美しい女神へ」と書かれた黄金のリンゴをパーティー会場に投げ込んだんですよ。この黄金のリンゴ一個からトロイア戦争が始まるんですから、ギリシャ時代は怖しいですよ。

 黄金のリンゴが投げ入れられると、この三女神が「最も美しい女神は私でしょう」と出てきて、収拾がつかなくなったのでゼウスの一声でパリスの審判になったんです。ここで疑問は、なんでいっかいの羊飼いが審判なのかですよ。ふつうは有り得ないでしょう。別に職業の貴賎を申しているわけではなく、王様とか王子様とか投票になると思うんですが、そこはギリシャ神話、うまく作ってあります。実はパリス君、誕生の時にいろいろあって捨てられたトロイア王の息子、そうトロイアの若君だったんですね。なんつーか、面白くもなんともない、うまくできすぎた話ですなぁ。

    三女神さんは、パリスに賄賂を贈るわけですよ。ヘーラーは、アシアの君主の座。アテーナーは、戦いの勝利。アフロディーテーは、最も美しい女。この時点で、どの女神が美しいかではなく、どの賄賂が良いかにすり替わっています。結局パリスは、アフロディーテーを選びました。やっぱり美女かよ。この時、パリスには奥さんがいたんですよ、ちゃんと。

 問題は、最も美しい女です。誰だったかというと、ヘレネーさんという人妻。ヘレネーさんの旦那はスパルタ王のメネラーオスなんです。パリスは、ヘレネーを連れ去るんですが、当然、スパルタ王は激怒します。妻を返せということになりますが、パリスは返さない。それでトロイア戦争が始まったという話です。さすがギリシャ神話! ですね。

    このパリスの審判になぞらえたのが、1976年5月24日にパリのインターコンチネンタルホテルで行われたカリフォルニアワイン対フランスワインのテイスティング。次回は、現代版ワインのパリスの審判です。