ワインの発酵って?
当たり前の話なんですが、ワインは葡萄を発酵させて造ります。発酵をさせないことにはアルコールにならないわけです。ものすごくシンプルに言ってしまえば、葡萄には糖分が含まれているので、その糖をどうにかして分解してやれば、エタノールと二酸化炭素を生成してワインができるわけです。このアルコール発酵プロセスは、酸素を必要としない嫌気的反応と言います。
ワインの場合も、酵母を使ってアルコール発酵をさせます。この酵母というのは酸素がないところで働いて、糖をアルコール発酵をさせます。多くのワインの場合の酵母は、Saccharomyces cerevisiae サッカロミセス・セレヴィシエという酵母になります。発酵温度は赤ワインの場合は30度。白ワインは20度。
ワイン造りのプロセスで、特に酵母を入れずに葡萄に自然に付着している自然酵母を使う方法があります。「カーボニック・マセレーション」と呼ばれる方法で、高濃度の二酸化炭素または窒素ガス中(低酸素雰囲気)に置かれたブドウの果実中で起こる嫌気的反応により酵素の作用で糖がアルコールに変化します。ボジョレーヌーボーがこの造り方です。
ワイン造りのプロセスのどこで発酵させるか
発酵プロセスは2つあります。通常のアルコール発酵とアルコール発酵の後のマロラクティック発酵です。マロラクティック発酵は、MLFと略しますが、これはフランス語のMalo-lactic fermentationの略で、ワイン中に含まれるリンゴ酸 が乳酸菌の働きによって乳酸と微量の炭酸 ガスに分解されることを意味します。
まずアルコール発酵です。主発酵と言いますが、赤ワインの場合、果梗を取り除いて葡萄を潰して、亜硫酸塩(二酸化硫黄)を添加して、主発酵になります。白ワインの場合は、亜硫酸塩を添加した後、圧搾してから主発酵です。念のため、このプロセスは全房発酵ではなく除梗・破砕のプロセスです。
次のマロラクティック発酵ですが、赤ワインの醸造プロセスは、
収穫→選果→除梗→破砕→主発酵(アルコール発酵)→醸し→圧搾→マロラクティック発酵→熟成→澱引き→清澄→濾過→瓶詰
アルコール発酵後、醸して圧搾した後、マロラクティック発酵が生じます。前述したように、リンゴ酸が乳酸に変化するわけですから、ワインの酸味が和らぎ、まろやかになります。その他、マロラクティック発酵の効果だと言われているのは、ダイアセチルという乳製品の香りによりワインの複雑性が増して、味わいが豊かになることや微生物学的安定性の向上です。乳酸菌は嫌気性のバクテリア(主にOenococcus oeni エノコッカス・エニ)で、酸素が多いと増殖しません。最近は、アルコール発酵とマロラクティック発酵を同時に生起させる方法(co-inoculation コ・イノキュラシオン)が広がっています。
そこそこ複雑なプロセスで造られる赤ワイン。写真はボルドー。
マロラクティック発酵は、赤ワインでは行われますが、白ワインではまちまちです。フレッシュな酸味が特徴のソーヴィニヨンブランやリースリングはダイアセチルの香りがうまく馴染まないので、めったに行われません。シャルドネには馴染むようなので行われていますが、全てでは無いようです。白ワインでのマロラクティック発酵は、アルコール発酵の次のプロセスになります。
発酵は、日本人には馴染みのあるものです。発酵食品は、パン、日本酒、味噌や醤油、納豆など私達の身近にたくさんあります。ワインの発酵について簡単に説明しましたが、発酵についてご興味がある方がいらっしゃいましたら下記の本はなかなか面白いですよ。